研究概要 |
本研究では,工作機械の熱変形量を重ね合わせ原理を用いてリアルタイムで推定する方法について研究を行った.その結果,以下のような有用な結論が得られた.(1)工作機械コラム表面の熱伝達率を測定する方法として,(1)構造物表面にステンレス箔を貼り付け,箔の先端と根元の温度,空気温度を測定することにより熱伝達率を逆算する方法,(2)構造物表面に厚さ1mmの断熱材を貼り付け,断熱材の上面と下面の温度,空気温度を測定することにより熱伝達率を逆算する方法(3)ステンレス箔の根元にヒータを貼り付け,ヒータの温度を正弦波状に変動させ,そのときの箔の先端の温度振幅比を測定することにより熱伝達率を逆算する方法の3通りの方法についてその有効性について検討した結果,温度を0.01℃,あるいは温度振幅比を0.01の精度まで測定することにより精度よく熱伝達率を測定できることが明らかとなった.(2)超音波を接触面に投射する事によって,接触面の表面あらさによらず接触熱抵抗を超音波で測定できる事が分かった.(3)熱源に流入する熱流束は,熱源にパルス状に熱流束が流入した場合のパルス応答を予め求めてデータベース化し,重ね合わせの原理を逆に利用することによって,流入熱流束を求められることが明らかとなった.(4)工作機械にパルス状に熱流束が流入した場合の熱変形挙動(パルス応答)を予め求めてデータベース化し,そのデータベースを重ね合わせることによって流入熱流束が変化する場合の熱変形量を精度良く推定できることが明らかとなった.また流入熱流束以外の熱的境界条件(熱伝達率,接触熱抵抗など)が変化した場合には,その境界条件下で求めたデータベース(パルス応答)を利用して重ね合わせを行う事によって,熱変形量を推定できる事が明らかとなった.
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