研究概要 |
昨年度は,旋盤系の工作機械を利用して,切削された表面の断面曲線を分析したところ,主軸の半径方向運動誤差が表面に転写され,それが最高工作精度試験における限界仕上げ面粗さを決定していることを理論及び実験の両面から実証した. 本年度は,旋盤系とフライス盤系の2種類の工作機械を取り上げ,主軸の軸方向運動誤差が工作物の表面にどのように転写されるかを明らかにして,断面曲線から工作機械の性能評価方法を明らかにすることを目的として研究を行った.その研究成果の概要は以下のとおりである. (1)旋盤とフライス盤の2種類の機械を使って,主軸の軸方向運動誤差を測定するとともに旋盤では端面切削を,フライス盤では主軸に工作物を取り付けて端面切削を行って,仕上げ面の断面曲線と主軸の軸方向運動誤差との関係を調べたところ,主軸の運動誤差だけでなく,主軸の発熱による伸びが転写されている. (2)フライス削りにおいては,1刃当たりの送り量が大きいときに断面曲線に見られる前刃で切削したときの切り込み量と後ろ刃で切削した時の切り込み量との差からテーブルの直角度を評価できる. (3)1刃当たりの送り量が大きいときに現われた規則的な断面曲線の送りピッチからテーブルの送り速度をレーザー干渉測長器と同等の精度で評価できる. 以上の2年間の研究をとおして,工作精度試験において表面の断面曲線を測定することによって,工作機械の幾何学的精度のうち,主軸とテーブルとの直角度,主軸の回転精度がわかっただけでなく,送り速度,主軸の熱膨張などの幾何学的精度以外の精度も評価できることがわかった.
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