研究概要 |
本研究の目的は,従来の成果を基盤にして,互いに混ざり合わない二つの溶融液体と気体噴流で構成される中空液滴形成場を流動制御ならびに温度制御することによって,従来より数段高性能で高品質の球殻生成システムを3年度に亘って確立するとともに,高温融体の相転移を対象とする学問分野を新たに開拓することにある.すなわち,初年度にあたる本年度ではいくつかの高温融体の凝固界面の成長時間と溶融体の圧力,流量,温度などの関係を具体的に実測することにある.すなわち,流動する高温融体の基本的な相転移特性を解明するために,精度の高い計測法を確立している既存の融体回流水槽を利用して,下記の具体的研究項目を遂行した.まず,既存の回流試験装置の試験部に新たに試作した球殻生成槽を接続し,成分設計した凝固温度の異なる4種の溶融塩を用いて,高温状態の中空溶融体の相転移を伴う流動特性の可視化実験,凝固履歴(凝固界面の成長)と固液共存組成体の温度依存性の定量的評価を行った.次に,得られた中空液滴の直径および肉厚の制御方法と中空液滴の生成に適した液体物性の選定方法を実験によって具体的に定め,高品質球殻の生成法の基礎資料を蓄積した.さらに,中空液滴はその運動中,変形や振動を伴うので,前記の実験と平行して,その形状を移動境界値問題として理論解析し,その最も効果的な計算アルゴリズムを開発した.また,上記のアルゴリズムに基づいてスーパーコンピューターを用いた中空液滴の流動特性の数値シミュレーションを行った. 以上,本年度はほぼ初期の目的を達成したものと信ずる.これらの成果は,本報書の研究発表覧に記述した通り,国内外の専門学会で公表されている.
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