研究概要 |
DNS(直接シミュレーション)を用いて正方形断面流路内の乱流を数値シミュレーションした。計算法は高次精度中心差分法を用いて,数値粘性を極限まで排除した。その結果,断面内に発生する二次流れが高精度にシミュレーションされた。また時間平均量については,流れの収支が壁面のごく近傍で平衡しない点を除いては妥当な結果が得られた。壁面近傍で格子解像度を増加させることにより,データベース化および乱流モデリングの検定用データ化することの見通しが得られた。 LES(Large Eddy Simulation)を用いて,一様流中の角柱まわりの乱流および流れから発生する流力音を数値シミュレーションした。音のエネルギーは流れのエネルギーに対して微弱なため,流れの微細構造が音の発生に大きな影響を及ぼす。特に低マッハ数の場合には,壁面上の流れが音の発生原因の大部分を占める。計算結果より,壁面上の乱流の僅かな相違が直観とは大きく異なる音の発生となることが示され,乱流制御による騒音低減化に対する可能性が得られた。 DNSを用いて円形乱流噴流を計算し,三次元軸対称せん断層における乱流への遷移過程および乱流の微細構造を調べた。立方体の計算領域における64×64×64の一様格子に対してスペクトル法を適用し,噴流の空間的発達を時間的発達に変換して解いた。初期擾乱として軸対称モードとらせんモードの二通りを与え,その後の発達を比較した。その結果渦輪のペアリング,リブ構造の発生および崩壊過程において,初期擾乱の噴流発達と微細構造に対する影響が明らかとなった。 三次元グラフィクス技術を用いて,溝乱流LESコードで得られる流れ場に対して乱れ構造解析を行った。ストリーク構造で表される乱れエネルギーと乱流せん断応力の分布と生成に対する考察より,構造に立脚した乱流モデルの構築に対する幾つかの重要な知見が得られた。
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