研究概要 |
本研究は,ターボ機械に発生する流動異常現象を局所的な流動状態から予見して自動的に回避し,つねに最適条件で作動する機械要素の開発,すなわちターボ機械の知能化のための基礎研究であり,局所流れのセンシング技術とマイクロアクチュエータを駆使した流れの制御技術の開発に焦点を絞っている。 センシング技術に関して,初年度に高感度微小圧力センサの出力信号を統計的に処理して軸流および斜流形ターボ圧縮機の旋回失速を予知するパラメータを見い出すことに成功したが,本年度は,圧縮機の運転条件が時間的に変化する場合について予知パラメータの計算誤差補正法を考案し,圧縮機運転中に旋回失速を予知する監視システムを開発した。 マイクロアクチュエータによる流れの制御に関しては,アクチュエータとしてバイモルフ型圧電素子を用い,柱体後方の剥離せん断層を制御する試みを行っている。初年度は,レイノズル数が大きい流れでは柱体表面の境界層に微小振動を与えても柱体後流におけるカルマン渦を引き込むことができないという従来の定説を覆し,特定の条件では引き込み現象が生じることを発見したが,本年度は,その条件について考察し,引き込み周波数の増大を図った。その結果,レイノズル数が比較的大きい場合にも,わずか十数ミクロンの振動を与えるだけで自然状態における放出渦卓越周波数の10%強の引き込みが可能な条件が存在することが分かり,その条件下で柱体後部の剥離点が下流側に移動し,抗力が低減することを明らかにした。
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