固体の燃焼、とくに内部に空隙を有する固体物質の燃焼の場合には、自然対流の存在により現象が複雑化する。そこで、本研究では微小重力環境を用い自然対流の影響を取り除き現象を単純化して、多孔性固体材料の燃焼現象の理解を試みようとした。 本年度は、多孔性固体材料の例として発泡ポリスチレンを選定し、これを一次元的に配列する一次元モデル、および2次元的に配列する2次元的モデルを用いて、固体材料の着火および火炎伝播現象について観察を行った。微小重力環境を得る手段としては、北海道上砂川町の500m級落下塔を用いた。実験に際しては、酸素濃度、球状粒子間の間隔、粒子径などを実験パラメーターとした。 これらの観察を行った結果、固体粒子の燃え移りには、大きく分けて2つの火炎伝播機構が存在することが明かとなった。1つは、粒子間隔が狭い場合未燃粒子が既燃粒子により加熱され可燃性蒸気を発生しこれが既燃粒子と未燃焼粒子の間に充満しここを火炎が伝播する形態、そして他方は、粒子間に可燃ガスが充満する前に未燃粒子が自発着火温度に到達し着火に至る場合である。前者の場合、火炎は連続的な火炎伝播を示し、後者の場合不連続な飛び飛びの燃焼状態となる。 次に、この火炎伝播に対して各種パラメータの影響を調べた結果、酸素濃度に対しては、濃度が高いほど伝播速度は大きく、また、いずれの酸素濃度に対しても微小重力下における燃え広がり速度の方が小さくなることがわかった。試料間隔の影響は、粒子から粒子への燃え移りは粒子間隔が広いほど遅くなっていくが、間隔がある一定以上になると火移りの機構が前述の後者の形態となり火移り時間が急激に大きくなる。一方、火炎伝播速度は粒子間隔と火移り時間により決まるが、火炎伝播速度が最大になる最適の粒子間隔と粒子径が存在し、それを越えるてもそれ以下でも伝播速度は遅くなることがわかった。
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