研究概要 |
固体の燃焼は自然対流の存在により現象が複雑化する。そこで、本研究では微小重力環境を利用して自然対流の影響を取り除き現象を単純化して、固体材料,燃焼現象の理解を試みた。 まず、平成4年度は、種々の落下塔による微小重力実験技術の確立を行った。5m,50m,500m級の3種類の落下塔を使用して、紙片や糸などの単純な形状を持つ試料の微小重力下での燃え広がり速度の測定に成功した。 平成5年度は、引き続き紙片の燃焼について種々のパラメータの影響を明らかにした。試料片が細いほど、また酸素濃度が高いほど火炎伝播速度が大きくなることや、通常重力下との比較から、微小重力下の方が火炎伝播速度の大きくなる場合が存在することなどもわかった。また、多孔性材料の例として、紙片を格子状に組み立てた試料の微小重力下における燃焼挙動の観察を行った。格子寸法や格子間のガスの通気性の有無の影響を種々の酸素濃度について調べた。この結果、通常重力下では格子間隔や通気性が火炎伝播速度に大きな影響をおよぼすのに対し、微小重力下ではこれらの影響は現れずほぼ一定の伝播速度を示すこともわかった。 平成6年度は、固体材料の燃焼特性を支配する因子を明らかにするために、単一組成で単純な形状をもつ発砲ポリスチレン球を使用しこれを任意の配列で並べて多孔性材料の燃焼を模擬することを試みた。この結果、固体材料の燃焼は、未燃焼部への熱の輸送と燃焼部への酸素の供給の両者により支配されていることがわか った。前者が支配的な場合には、微小重力下の方が火炎伝播速度は大きくなるが、後者が支配的な場合は通常重力下の方が火炎伝播速度が大きくなるなることがわかった。多孔性材料の場合も、十分な酸化剤が内包されている場合を除けば酸素の供給が現象を支配する形となり、通常重力下のほうが燃焼は容易になることが予想された。
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