ラジカルの反応選択性や寿命に対応させたプラズマ場を実現させることにより、CVDプロセスの能動的制御を行うことを目的として、従来のプラズマ発生手法とは全く異なる新しい高電圧極短パルス放電を採用して研究を行った。ガスとしては、ダイヤモンド合成に用いられる水素希釈メタンを対象として、まず、高電圧極短パルスプラズマの発光強度空間分布の経時変化の測定を行い、印加電圧、圧力、パルス幅を変化させることにより、プラズマの層状構造の制御が行えることを示した。すなわち、(1)過渡的なプラズマ構造成長過程だけの場合と、(2)陽極近傍に強い発光の陽光柱を持つ準定常的なプラズマ構造が維持される場合である。次に、この結果をふまえて、本高電圧極短パルスプラズマを既存のDCプラズマにハイブリッドさせることにより、実際にダイヤモンド合成におけるCVD反応の制御を行い、ダイヤモンド初期核の発生密度が大きく増大することを示した。また、この効果は、パルス幅が長いほど、印加電圧が高いほど、圧力が低いほど顕著に現われた。その理由は、DCプラズマでは、電流値の増加により基板へのラジカル供給量を増加させてもこれが既に発生している核の成長に選択的に消費されるのに対し、高電圧極短パルスプラズマを付与して上記(2)の状況を実現させると、基板表面近傍に瞬間的に高濃度ラジカル場が形成され寄与ラジカルの過飽和度が非常に大きくなることによる。このように、高電圧極短パルスプラズマの印加、およびそのパラメータを変えることにより、プラズマ構造の変化を通して基板へのラジカル供給量を大きく変化させることができるようになり、CVD表面反応場での核生成や核成長過程を能動的に制御できることが明らかとなった。
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