研究概要 |
リング状のパイロット火炎で保炎した予混合噴霧専焼火炎の広い範囲に渡って,火炎発光,油滴ミー散乱光およびPDAによる油滴直径-速度を測定し,油滴存在領域と反応領域との関係,並びに火炎中での油滴クラスターの燃焼形態の変化を系統立てて調べることにより,噴霧火炎の油滴群燃焼形態の詳細な解明を試みた.その結果,以下の結論を得た. 1.始め時間的に連続して検出されていた燃料噴霧中を火炎が選択的に伝ぱすることによって,燃料噴霧がクラスターに分割され,油滴群燃焼が生じる.2.形成された油滴クラスターが蒸発・燃焼しながら飛行するにしたがって,油滴クラスター外周部に存在していた燃焼反応領域がその内部にも出現し始めるとともに,サブクラスターが強い輝炎発光を伴いながら階層的な油滴群燃焼を行なう. また,同様の方法を用い,予混合噴霧流に円柱保炎器を流れと直角に挿入して強制的に気相-油滴間のスリップを起し,円柱後流に形成される大規模なせん断層が噴霧火炎の燃焼形態・構造にどのような影響を及ぼすかを調べた.その結果,以下の結論を得た. 1.円柱で火炎が保炎される場合には,円柱後流で小規模な油滴群に分断されて,燃焼形態が油滴群内部の個々の油滴近傍ですす発生を伴う拡散的な燃焼に早く移行する.このように群燃焼形態の変化が早まるのは,加熱された円柱や円柱で保炎された火炎からの熱(さらにはラジカル)の供給による分断された油滴群の内部に火炎が比較的早く侵入するためであると考えられる.2.円柱によって発生する小規模な油滴群の内で火炎下流域まで残存する比較的数密度の高い油滴群は強いCH発光を伴いながら拡散的に燃焼しており,円柱挿入が噴霧燃焼を促進させるとは一概には言え切れず,この場合にはむしろ小規模なすすを伴う拡散燃焼領域を多数発生させる方向に働いていると考えられる.
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