本研究の目的は以下の通りである。まず第1に、申請者らによるスロッシングによって発生する流体力に関する計算モデルに基づいて、スロッシングを利用した制振装置を実際の構造物に搭載した際の応答計算を行なうことの可能なシミュレーションプログラムを作成するとともに計算結果を検証するための実験を行なう。第2に、容器内部に金網などの抵抗要素を挿入することでスロッシングダンパーの動特性が著しく向上することが理論的に明らかになっていることを受けて、従来から受動型ダンパーとしてのみ用いられてきたスロッシングダンパーを可変集中抵抗要素を挿入したセミアクティブダンパーとした場合についての理論的検討と実験による検証を行なう。第3に、強風による揺れのような小振幅入力時にはスロッシングダンパーを受動型として作動させ、地震のような大振幅高振動数入力時にはアクティブマスダンパーとして能動型としても利用できるハイブリッドダンパーシステムの可能性について理論的検討を行なった上で、実際のシステムを構成して実験を行なう。 平成4年度の研究では、申請者が考案した「浅水波が容器に及ぼす流体力に関する計算手法」に基づいて、スロッシングダンパーを実際の構造物に受動型の制振装置として搭載した場合について計算し、実験によって計算方法の妥当性を検証することを目的として研究を行った。まず、高層建築物や橋脚の主塔等のような連続体と見なせる構造物に、スロッシングダンパーを設置した場合の過渡振動特性と定常振動応答を計算し、計算結果をグラフ表示した。つぎに、計算結果を検証するための実験装置を作成した。計算結果と実験結果との比較を行い、本手法が設計に使えることを示した。また水深が深くなった場合についても、浅水波理論の替わりに有限振幅波理論に基づく計算方法が有効であることを示した。
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