本研究は、多関節運動機構のリンク間の強い動力学的干渉性と非線形性に基づく最適運動軌道を解明することを目的とする。まず最適運動軌道を効率的に求める手法を確立し、産業用ロボットアームの最短時間軌道計画、および人間のスポーツに於ける拘束条件の少ない投球動作と非ホロノミックな拘束をもつ鉄棒の大車輪の最適運動解析を行いそれらの特徴を明かにした。得られた主な成果を以下に記す。 (1)始点・終点・複数の中間点の変位、速度、加速度の拘束条件と連続性を考慮でき、任意の評価関数に対する最適軌道を効率的に求める解法として、高次エルミート多項式を内挿関数とし、最急勾配性、ニュートン法とを組み合わせた最適化アルゴリズムを用いる汎用的で計算効率の良い数値解析法を確立した。 (2)本最適軌道計画法を用いて、モータの温度上昇が高速化の制限となるダイレクトドライブ形ロボットアームのクーン・タッカの条件を満たす厳密な最短時間軌道計画が可能である。またモータ間の未定定数の比を発熱許容値の逆数比に固定し、最も負荷の大きいモータの発熱量を最大許容値とする準最短時間軌道計画法は厳密解に近い解を得ることが可能で、しかも計算時間を大幅に短縮できる。 (3)終点の一方向速度を最大とする投球動作の最適運動解は、上手投げ動作を表現する解と、腕を折り曲げる動作を表現する解の二つに大別できる。人体肩部の第1軸のアクチュエータのパワーが大きくなるにつれ上手投げ動作が大局解となり、逆に腕部の第2軸のアクチュエータのパワーが大きくなるにつれ腕折り曲げ動作が大局解となり、且つ複数の局所解も生成されるようになる。 (4)第一関節の入力が零となる非ホロノミック拘束の大車輪運動解はペナルティー法を用いて解くことができ、手の摩擦力、人間の関節の回転可能範囲を考慮すれば最適軌道解は体操選手の運動に近くなる。
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