視覚サーボ系は画像情報にもとづくフィードバック制御系で、未知の環境で作業する知能ロボットの制御の中核となる。本研究では制御理論的観点から位置と力の同時制御と環境認識を動的に結合し、認識の深化と高度な作業の実施が相互に補完しあいながら一体となって進行する新しい視覚サーボの方式の確立を目指す。 従来の視覚サーボ系の研究においては、ロボットは理想的な(応答の遅れや制御誤差のない)特性をもつ装置としてとりあつかわれていたが、実際は、ロボットは非線形なダイナミクスをもち、これを無視しては良好な制御はできない。本研究においては、視覚サーボ系の動特性をロボットのダイナミクスとカメラの特性を考慮した非線形な微分方程式で記述し、その安定化可能性を証明した。また、視覚サーボ系の非線形性を補償するフィードバック制御器を導出した。 さらに、視覚サーボ系のシミュレータを作製し、さまざまなシミュレーションにより上記のモデルと制御器の有効性を検証した。 一方、高度なサーボ系の実現のために、簡単なマークを対象としてその位置推定のための高速な画像処理アルゴリズムを開発し、複数のトランスピュータからなる高速画像処理装置に実装した。これにより4つのマークをもつ物体の位置推定がサンプリングレート20Hzの高速で可能となった。 さらに2リンクダイレクトドライブロボットと高速画像処理装置をもちいた実時間実験により、従来の視覚サーボ系と本研究の制御器の性能を比較し、本研究により得られた制御器がより精度よく安定で、観測ノイズや外乱に対してもロバストであることを確認した。
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