研究概要 |
視覚サーボ系は画像情報にもとづくフィードバック制御系で,未知の環境で作業する知能ロボットの制御の中枢となる.本研究では制御理論的観点から位置と力の同時制御と環境認識を動的に結合し,認識の深化と高度な作業の実施が相互に補完しあいながら一体となって進行する新しい視覚サーボの方式の確立を目指す. 従来の視覚サーボの研究では,ロボットは応答の遅れや制御誤差のない理想的な特性を持つ装置として取り扱われてきた.しかし実際にはロボットは非線形なダイナミクスを持ち,これを無視して良好な制御を行なうことはできない.そこで昨年度,ロボットのダイナミクスを視覚サーボ系に組み込んだモデルを導出し,非線形フィードバック制御法を提案した.そして本年度はそのモデルにもとづいて,力覚により低レベルであるが高速なインナーループ制御を構成し,視覚により低速であるが高レベルなアウターループ制御を付加する手法を提案した.この手法はカメラにより力センサの分解能の低さを補い,力センサによりカメラのサンプリングレートの低さを補う一種のセンサ統合手法になっており,従来の視覚サーボの研究には見られない全く新しい手法といえる. 提案した制御法の有効性を示すため,ロボットによる玉のせ作業を取り上げた.具体的には,ロボットの手先と板の間に取り付けられた力センサとロボット上部に取り付けられたカメラにより玉の位置を計測し,ロボットを制御することにより玉をロボットの手先に固定した半球上の板の頂点に静止させることを目標とする. 制御系設計用CAD“MatrixX"をもちいてシミュレータをワークステーション上に作成し,シミュレーションにより提案する手法の有効性を確認した.また,2リンクダイレクトドライブロボットを用いた実験により,ある程度安定な作業が可能であることを確認した.しかし,モデルに考慮されていない力センサのノイズとロボットの剛性不足による振動のため,実験結果は満足すべきものではない.これらの要素を補償するためには,より精度の良いモデルと力センサの信号処理法の研究が必要である.これらについては次年度の課題である.
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