まず、Si(100)基板上とSi(111)基板上の PtSiの成長の違いを見るために、MBE装置内でPtSiの同時蒸着を行った。その結果、Si(111)基板上の方がSi(100)基板上より遙かに結晶性の良いPtSiがエピタキシャル成長することが分かった。この上に更にSiをMBE成長させSi(111)/PtSi(010)/Si(111)サンドウィッチ構造を作製することを試みた。Siを基板温度400℃及びそれ以下で成長させた場合にはSi(111)/PtSi(010)/Si(111)のきれいなサンドウィッチ構造が得られた。しかし、基板温度600℃になるとSi(111)/PtSi(010)/Si(111)のサンドウィッチ構造にはならず、PtSiが柱状あるいは壁状にSi基板上に立ち、その間をSi層が埋める形でエピタキシャル成長することが、断面TEM及び高分解能SEM観察で分かった。 次に、本来のp-Si/Ge/Si歪超格子を作製するための実験を行った。Si/Ge/Si歪超格子ではGeの偏析によるヘテロ界面のだれが問題となっており、SbやBiをサーファクタントとしてこれを抑制することが盛んに研究されている。しかし、p形不純物のサーファクタントは現在の所報告されていない。本研究ではまずHB0_2を用いてSi基板上にBを0〜1ML制御して吸着させることを検討した。その結果RHEED強度振動を観測することにより、Bを1/3ML〜1ML制御して吸着出来ることが判った。このB吸着Si(111)面上にSiを成長させたところ、B吸着量が1/3ML以上の場合、成長初期に通常の2倍の4ML周期のRHEED強度振動が数回観測され、その後表面B吸着量が1/3ML以下になると通常の周期に戻った。このデータからBの偏析長をA単位で求めることが出来た。Bの表面偏析性は基板温度の上昇と共に急激に高まり、p-Si/Ge/Si歪超格子作製のためp形サーファクタントとしてBが非常に有望であることが実証された。
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