研究概要 |
ある方向には不規則性を、他の方向には規則性をもつ半導体を1989年に提案し、その半導体の実現に関する研究をおこなって来た。こうした結晶異方性をもつ半導体においては、エピタキシァル成長が可能であると云う性質を失うことがなく、不規則による新物性を創性することが出来る。層幅を不規則に変えた超格こAlAs/GaAsで作製し、数多くの新しい物性を実現できることを実証して来た。 本研究では、Al_x'Ga_<1-x>As/GaAs,AlAs/Al_yGa_<1-y>As及びAlP/GaP,Si_<1-x>Ge_x/Siにより不規則超格子を作製し、以下のような研究成果を得た。(1)温度上昇に対し、同じ組成の規則超格子、バルク混晶に比べて、発光強度の低下が少ない。AlGaAs系では、Al組成を変えて、障壁層と井戸層のエネルギーバンド差による影響を調べた。(2)不規則の効果は、バンド差に比例する。したがって、AlAs/GaAsにおいて、最も大きくその効果が現れている。AlPGaP系では、(3)P用ガス源として、ter-tiarybutylphosphineを用い、また基板面を(NH_4)S_xで処理を行うことにより、AlPとGaPの良好な界面を得た。(4)AlP/GaPによる不規則超格子を作製し、AlP,GaP両者が間接遷移型半導体であるにも拘らず、同組成の半導体に比べて、9Kで110〜150倍明るい発光を観測した。さらに、SiGe系では、(5)Si_<0.76>Ge_<0.24>/Siによる不規則超格子で、10Kで数倍明るい発光を観測した。いずれの材料系においても、不規則の導入により、発光強度を強め得ることが分かった。これらの結果を報告、発表した学会誌、口頭発表論文、出版物を取りまとめて本研究成果報告書とする。 SiGe系では、両者の格子定数差により大きなバンド差を得ることが出来ず、不規則の効果が、充分現れていない。今後、表面変成剤の導入等によりこの点を検討して行く予定である。さらに不規則超格子の発光デバイスへの利用をおこなって行く。
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