研究概要 |
40%NH_4F処理によって水素終端したSi(111)表面を原子間力顕微鏡(AFM)で観測した結果、この表面は,(111)結晶軸からの微傾斜度を反映して、テラス幅が数百nm、ステップ高さが約0.3nmの明瞭な原子ステップ構造となることがわかった。この結果は、FT-IR-ATR測定において、この表面が主としてSi-H終端されていると評価されることと一致している。この表面を始状態として4.5%HF処理すると、微細なピットが発生し平坦化が劣化する。また厚さ4nmの熱酸化膜を1000℃で形成した後の酸化膜表面モフォロジーは、初期表面の状態が保持されている。この熱酸化膜を4.5%HFにより除去した後もAFM像は鮮明さに欠けるものの原子ステップが確認できた。これらの結果は、シリコンの熱酸化が一層毎に進行(layer-by-layer酸化)していることを示唆する。次に、熱酸化膜を希釈HF溶液で繰返しエッチングしながら、P偏光ATR測定して、酸化膜構造を深さ分析した。膜厚30A以下において、酸化膜厚の減少に伴ってLOフォノンによる吸収ピーク位置が1250cm^<-1>から1200cm^<-1>付近まで低波数シフトすることを観測した。また、この低波数シフトには、SiO_2/Si界面のマイクロラフネスの違いによる差異は観測されない。更に、1000℃で作成した熱酸化膜の吸収ピーク位置は、同じ膜厚の800℃酸化膜に比べ、より高波数側に存在する。十分に構造緩和した酸化膜の光学定数を、多重反射効果を考慮したFresnelの反射式に代入して計算した吸収ピーク位置は膜厚に関係なくほぼ一定(1248cm^<-1>)であることから、実測された低波数シフトは、基板界面近傍に存在する圧縮性応力によって歪んだSi-O-Si結合の存在を示唆する。
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