研究概要 |
コンピュータ間の通信を実現するプロトコルは,多層プロトコルとして表現されるが,高速通信を実現するためには効率のよいプロトコルが必要である.しかし多層構造のプロトコルほど送達確認やプロトコル処理に要するオーバヘッドが大きくなり,回線速度に比べたスループットが低下してしまうという性能上の問題点が存在する.このように多層プロトコルの性能の定量的評価はきわめて重要であるが,単純化したモデルによる理論的解析では,十分な評価が行えていない. 本研究では,複数のトランスピュータを用いて実際の長距離高速回線に近い誤り特性と遅延特性をもった模擬伝送路環境を構成し,情報源および宛先のコンピュータもトランスピュータにより実際にプロトコル処理をして通信を行うことにより,各種の条件下での多層プロトコルのスループット性能を明らかにする. 本年度は,各プロトコルパラメータ,すなわちデータユニット長,ウインドウサイズ等や,ネットワークの条件,すなわち伝送速度,誤り率,伝送遅延がネットワークのスループット・伝送効率に与える影響に加えて,パケットの平均時間に与える影響を調査した.また,ウインドウシステム上でグラフィカルなユーザ・インタフェースを設計し,条件を与えてシミュレーションを行い,結果を表示できるようにした. また,設計したシミュレータを用いて,チェックサム計算がスループットに与える影響,並列処理による性能向上,およびメモリバンド幅の寄与を評価し,100Mb/s以上の高速通信のためのプロトコルを設計するときの指針を明らかにした.
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