等価端部電磁流法(MEC)は、散乱体稜線に沿って仮想的な線電磁流を線積分することで電磁界を表現する方法で、高周波光線理論である幾何光学的回折理論(GTD)の見通しの良さを極力保ちつつ、適用範囲や精度を飛躍的に高める。本研究の課題は、等価端部電磁流(EEC)として、高精度の表現を与えることである。申請者はすでに、EECの全ての成分(物理光学成分および摂動フリンジ成分)の非物理発散を、統一的に解消する方法として「最適積分路法」を、さらに物理光学成分に対しフェルマーの原理をより拡張した「修正エッジ法」を提唱している。本研究では、以下の成果を得た。 (1)「修正エッジ法」を「最適積分路法」と比較し、EECの物理光学成分の任意性を数値的に裏づけた。さらにEECを立体(楔)へ拡張し、既存の中で最も高精度な一様回折理論(UTD)と同様の精度を得ることができた。(2)物理光学成分に対する「修正エッジ法」に続き、摂動フリンジ成分に対する近似的な「修正エッジ法」を提案した。特殊関数を使うことなく精度の良い等価波源を構成し、精度を確認した。(3)時間領域における回折波の測定を試みたが電波暗室の反射減衰量が不足していることが判明し、暗室の改良を継続している。(4)物理光学法の「疑似透過光」による誤差を初めて見いだした。曲面に対する物理光学法の誤差についての定量的検討を行った。(5)等価端部電磁流をホイヘンスの波源とみなし、停留点を視覚的に理解できるよう画像表現ソフトウェアを開発した。電磁界理論とコンピュータグラフィクスにおける視覚の対応を明らかにした。(6)アンテナ工学で広く用いられている物理光学法、開口面法など、従来の各種高周波数値解法に対する等価端部電磁流の一様表現を導出しそれぞれの誤差特性(特に偏波特性)や等価性を評価した。
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