平成4年度に得られた本研究による主要な成果を以下にまとめる。 1.変調方式としてπ/4シフトQPSKならびにGMSKを仮定し、マルチパスフェージング下のセルラー網において、単位セル当りのパケット伝送スループットを最大化する最適C/I(所望信号対同一チャネル干渉比)および最適セル繰り返しパターン(クラスターサイズ)を、高速データ伝送の場合について、理論的かつ計算機シミュレーションによる解析を併用して明らかにすることができた。 2.シャドウイングを考慮した場合や、マイクロセル特有のブレークポイントをもつ伝搬条件下で、上記最適値がどのように変化するかを明らかにした。 3.キーパラメータC/Iをリアルタイムに検出する方法として、π/4シフトQPSKのI-chとQ-chの絶対値出力の差分を取る方法について詳細な検討を行った。その結果、本手法は多重経路伝搬の遅延時間検出に有効であるのみならず、C/I検出にも有効であり、更にビット誤り率の監視法としても利用可能なことが判明した。 4.同一チャネル干渉波が複数個存在すると、変調時には合成信号のレベル分布がレイリー分布より徐々に浅くなり、その結果C/I検出特性にも影響を与える場合が存在することを見い出した。 5.遅延時間差の大きな多重波伝搬下における最適受信法として、多重波を空間的に分離受信するセクターアンテナと時間的に合成処理するViterbi適応等化器を組み合わせた受信系を提案し、その優れた耐多重波・耐干渉波特性を確認することが出来た。 6.高性能ワークステーション上に移植された市街地多重波伝搬遅延プロフィール予測システムにおいて、建物の標高差を考慮する一方、反射壁面探索アルゴリズムの改良によりその高精度化をはかることができた。
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