現状の知識処理の大きな課題である知識獲得のボトルネックを克服するために学習機能や知識獲得支援の研究が行われているが、これらとは異なり、本研究では宣言的知識表現に対する知識ベース・コンパイルによる高速推論技術が重要であるという観点から研究を行った。本研究では宣言的知識表現として最も形式が整った論理表現、及びその実用的部分集合であるホーン節論理を対象としたが、この場合の知識ベース・コンパイルは一般に冗長部分を切り捨てた主項(Prime Implicants)への展開となる。しかし、すべての主項に展開すると必要なメモリ空間が膨大となることから、重要な枠組みであり他と矛盾する可能性を有する知識を仮説として含む仮説推論の知識ベースについて、矛盾関係を表す制約知識のかかり方の解析に基づき、推論速度の向上に有効な部分のみを展開する部分コンパイルの技術を考案、開発した。また、論理回路の多段化による簡単化で開発されてきた手法を上記の知識ベース・コンパイルに結合して、効率化を図る手法を明らかにした。この知識コンパイル法は推論高速化への計算アルゴリズム的アプローチであり、これまでの学習や類推等による人工知能的アプローチによる高速化よりも実用性が高いと考えられる。 更に仮説推論の高速化に関しては、1)変数を含む述語論理表現の仮説推論システムに対する高速推論法、2)経験に基づく学習による仮説推論の高速化手法、3)0-1整数計画法の近似解法を適用することにより準最適解を多項式時間で求める非常に実用的な手法を考案した。
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