数値誤差で破綻することのない幾何的アルゴリズムの設計法

1992 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 04452191
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 杉原 厚吉 東京大学, 工学部, 教授 (40144117)
• 研究分担者: 今井 敏行 東京大学, 工学部, 助手 (90213214) ; 富岡 豊 東京大学, 工学部, 助手 (30188776) ; 伊理 正夫 東京大学, 工学部, 教授 (40010722)
• キーワード: 幾何的アルゴリズム / 数値誤差 / 位相優先法 / ボロノイ図 / 組合せ幾何学 / グリッド生成 / 凸包構成 / 交差図形

研究概要

1.以前から開発を続けている線分ボロノイ図の逐次構成アルゴリズムを完成させた。その性能を計算実験によって調べ、数値的安定性が達成されていること、従来の方法と同じ計算効率をもつことを確認した。
2.図形の交差検出、平面上の線分アレンジメントの構成法に、位相優先の考え方を適用し、従来のアルゴリズムを数値的に安定なものに改良することに成功した。
3.既に完成している点ボロノイ図構成アルゴリズムを、図形の骨格線の抽出、有限要素法のためのグリッド生成への応用を試行し始めており、有効性について見通しを持つに至っている。
4.点ボロノイ図構成アルゴリズムが、各種の一般化されたボロノイ図を作るための近似算法として使えることを発見し、その有効性を計算実験で確かめつつある。適用可能な一般化ボロノイ図の中には、線分や円孤などの図形に対するボロノイ図、ある種のリーマン計量によって定義されるボロノイ図、ラゲールボロノイ図、加法的に重みづけられた距離によって定義されるボロノイ図、一様な流れ場において定義されるボロノイ図、障害物回避距離によって定義されるボロノイ図、が含まれる。
5.本手法では、ユークリッド幾何の対象を、ユークリッド幾何より少し広い組合せ幾何学の世界の対象であると仮想的にみなして扱っていることがわかった。ただし、凸包構成アルゴリズムをラゲールボロノイ図構成アルゴリズムに対しては、ユークリッド幾何の世界からはみ出していないこともわかった。
6.アルゴリズムの性能評価実験を行なうために、各種の幾何学的対象を、ランダムに、かつ効率よく生成するという手続きが自明ではないことに気付き、この方向の研究も開始した。

研究成果

• [文献書誌] Tamal K.Dey,C.L.Bajaj and K.Sugihara: "On good triangulations in three dimensions" International Journal of Computational Geometry & Applications. 2. 75-95 (1992)
• [文献書誌] T.K.Dey, K.Sugihara and C.L.Bajaj: "Delaunay triangulations in three dimensions with finite precision arithmetic" Computer Aided Geometric Design. 9. 457-470 (1992)
• [文献書誌] K.Sugihara and M.Iri: "Construction of the Voronoi diagrm for “one million" generators in single-precision arithmetic" Proceedings of the IEEE. 80. 1471-1484 (1992)
• [文献書誌] K.Sugihara: "Voronoi diagrams in a river" International Journal of Computational Geometry & Applications. 2. 29-48 (1992)
• [文献書誌] K.Sugihara: "A simple method for avoiding numerical errors and degeneracy in Voronoi diagram construction" IEICE Trans.Fundamentals. E75-A. 468-477 (1992)
• [文献書誌] K.Sugihara: "An intersection algorithm based on Delaunay triangulation" IEEE Computer Graphics and Applications. 12. 59-67 (1992)
• [文献書誌] H.Inagaki,K.Sugihara and N.Sugie: "Numerically robust incremental algorithm for constructing three-dimensional Voronoi diagrams" Proceedings of the Fourth Canadian Conference on Computational Geometry. 334-339 (1992)
• [文献書誌] K.Sugihara: "Application of the Delaunay triangulation to geometric intersection problems" Lecture Notes in Control and Information Sciences(“System Modelling and Optimization",Proc.15th IFIP Conference). 180. 112-121 (1992)
• [文献書誌] K.Sugihara: "Topologically consistent algorithms related to convex polyhedra" Lecture Notes in Computer Science(“Algorithms and Computation",3rd International Symposium,TSAAC '92). 650. 209-218 (1992)
• [文献書誌] 杉原 厚吉: "位相優先法-幾何的アルゴリズムの数値的安定化のための一手法" CGシンポジウム'92. 95-104 (1992)
• [文献書誌] 杉原 厚吉: "計算幾何学と画像処理" 1992年第23回画像工学コンファレンス. 51-56 (1992)
• [文献書誌] 谷口 行信,杉原 厚吉: "検出もれのない代数曲線の追跡法" 情報処理学会論文誌. 33. 1245-1253 (1992)
• [文献書誌] A.Okabe, B.Boots and K.Sugihara: "Spatial Tessellations-Concepts and Applications of Voronoi Diagrams" John Wiley & Sons, 532 (1992)
• [文献書誌] 杉原 厚吉: "不可能物体の数理" 森北出版株式会社, 179 (1993)