研究概要 |
従来の論理合成技術は,機能記述で与えられた機能を満たす論理回路のトポロジカルな情報を生成することを主眼としており,最終的なマスクパターン上に現われる幾何学的な位置情報の決定はレイアウト時に機能をほとんど考慮しない形で行われている.このため,制御系の回路のように規則性の少ない回路では人手設計を上回るような性能の回路が得られる場合もあるのに対し,規則性の高い演算器などのデータパス系の回路では,遠く人手設計に及ばないのが現状である.このような現在の論理合成技術の内蔵する問題を解決するために,本研究では,論理合成の時点からレイアウト時の幾何学的な制約を考慮した,新しい論理合成手法とそのための設計記述言語について研究をすすめている.具体的には, 1)レイアウト上の規則性などの情報を機能記述に加えられる設計記述言語の研究. レイアウト上の規則性や概略の配置配線情報を機能設計時に指定して,その情報からレイアウト設計を行なうための関数型記述言語を提案し,その能力を調べた. 2)レイアウトの面積や配線遅延を考慮した論理合成手法の研究. 論理合成時に配線遅延や面積を考慮にいれた論理合成手法を検討した.入出力端子の位置に注目して,論理の多段化と配置を同時に行なう手法,多段化段階で回路のファンアウトを考慮する手法などを考案し,プロトタイプを作成して評価した. 3)交換則を利用した回路変形の面積と配線遅延への影響の評価論理演算や算術演算でしばしば現われる木状の回路について,木の構成法と面積および配線遅延の関係を評価し,単純な2分木よりも性能のよい構成が存在することを発見した. 本研究は,これまで独立に行なわれていた論理合成とレイアウトを融合し,設計者がアーキテクチャ設計時にレイアウトに関する情報を与え,それを利用して論理合成とレイアウトを行なう新しい自動設計システムの枠組みを提案するものである.
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