本年度は、サブショット雑音光を発生することを目的として、(1)光第二高調波発生を用いる方法、(2)光パラメトリック発振器を用いる方法、(3)半導体レーザを用いる方法について研究を行った。 まず、共振器内に非線形光学結晶を挿入し、第二高調波を効率よく発生する方式に関して、量子論に基づく雑音の理論を展開した。種々の動作条件について検討した結果、入射基本波を共振器に共振させ、入射パワーを十分に大きくした極限において、第二高調波に関して、ショット雑音レベルの1/9までの雑音低減が可能であることが示された。一方、レーザ共振器内部に非線形光学結晶を挿入して第二高調波を発生させた場合には、雑音抑圧度は、最大でもショット雑音レベルの1/2にとどまることが示された。 次に、相関光子対の発生を目的として、KTP結晶を用いたモノリシック共振器型発振器に関する研究を行った。低閾値での発振は実現されたものの、十分な発振安定度は得られず、サブショット雑音状態を達成するには至っていない。このため、モノリシック共振器型発振器の詳細な理論解析を行い、安定な発振を実現するための条件を求めた。この結果、温度安定度が、アイドラ光とシグナル光の二重共振条件を維持するために重要であることが明らかになった。現在、この結果に基づくデバイスの改良を進めている。 半導体発光素子(発光ダイオードおよび半導体レーザ)の量子雑音抑圧に関する理論を展開し、これを検証するために半導体レーザのショット雑音低減に関する実験を行った。GaAlAsレーザを液体窒素温度に冷却することにより低閾値化し、ポンプレート40以上で定電流動作させたところ、サブ・ショット雑音光が発生していることが確認された。半導体レーザ出力端では、ショット雑音以下10dBの雑音レベルが実現されていると推定される。
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