一様に磁化された磁性体中を伝搬する静磁波は、2〜20GHzのマイクロ波帯で動作する信号処理デバイスを小型化する上で不可欠であり、その伝送特性を把握することは応用かつ実用上重要である。本研究では、静磁波伝送特性を把握するため、新たに測定方法を提案し、理論および実験的に検討を行なった。提唱した測定方式は、ヘテロダイン検波により偏波面回転角度検出を行なう走査型レーザ顕微鏡を利用したしたものであり、静磁波の伝搬の様子を三次元的に表示し、その伝送特性を求める。ここでは、まずレーザ光を静磁波が伝搬している磁性体表面に直接照射が可能となるように、静磁波励振用トランスデユーサを作成し、従来のトランスデユーサと同等の励振効率を有することを実験的に確かめた。ついで、ヘテロダインレーザ顕微鏡を構成し、静磁波の界分布の測定を試みた。その際、伝送されるマイクロ波が入力電力に強く依存する、いわゆる非線形現象が現われ、静磁波励振パワーを大きくすることができず、レーザ光による検出が困難であることがわかった。そこで、非線形現象を把握するため、実験静磁波が伝送する様子をループアンテナを用いて測定し、その特性を調べた。その結果、マイクロ波入力電力が小さい場合、伝送される静磁波の界分布の形は伝送距離にかかわらず変化しないが、非線形現象が現われる入力電力での励振では、トランスデューサ付近で急激に減衰し、さらに基板端部においても減衰を受け、界分布の形も変化することを見いだした。この性質を利用することにより、S/Nエンハンサーや静磁波ソリトンなど、興味深い現象を観測することができる。なお、非線形特性の影響をさけるためには、高出力レーザの採用による光パワーの増大化、あるいは、より高感度な前置増幅器の採用が必要であり、今後これらの点に着目して改良を試みる予定である。
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