研究概要 |
逆動力学を用いないロボットマニピュレータの制御法として,申請者らが提案している手法の有効性を,軸間の干渉の強いDDロボットにおいて実証することが研究目的である.昨年度に納入されたIMI社製のDDロボット実験装置を用いて,本年度は本格的な研究に取り組んでいるが,その中間的な成果をまとめると以下のようになる. (1)関節のロバストサーボコントローラの検討 外乱抑圧特性やシステム変動に対するロバスト性を改善する諸方法の関係を明確にする意味で,2自由度ロバストサーボ系の安定性(線形制御系の意味での安定性や非線形干渉力による不安定化の解析)に関する議論を行い,制御系設計における有用なノウハウを得た. (2)ロボット制御の統一的実現 ロバスト位置制御系を内含する形のインピーダンス制御・コンプライアントモーション制御・力制御・ハイブリッド制御など,ほとんどすべてのロボット制御の統一的実現法の整理はすでにほとんど完了し,実験によるその有効性を確認した. (3)ロバストな力制御系 柔硬とりまぜた対象物体を安定に把握するために,従来から用いられてきた適応制御やニューラルネットなどの学習機構を用いず,あくまで固定係数のロバストな力制御器によって,さまざまな特性をもつ対象物体を安定に素早くつかむ新しい手法を実現した. (4)衝突過程の制御 軌道制御から力制御へ移行する際に生じる衝撃力を緩和する方法を考案した.衝突検出を力センサまたは外乱オブザーバのみで行う場合と,目(テレビカメラ)を付けた場合とを検討する予定である.前者は所期の成果を得ているが,後者は今後の課題である. (5)柔軟関節の制御 減速機や力センサの剛性が低い場合や,アームが剛体とみなせない場合を取り扱うものであり,今年度はこの項目に関してかなりの進展が得られた.すなわち,制御対象を表現する2慣性共振系の制御法として,状態オブザーバを用いるSFLACの提案,H∞制御やμシンセシスを用いた手法,さらに原点にたち返って,低次元コントローラを用いる共振比制御といった手法を考案し,シミュレーションや別途購入した3慣性系実験機による実証を行った. 以上の他に,障害物を回避する実時間軌道生成に関する研究を開始し,良好な結果を得ているので,これについても今後研究を継続したいと考えている.
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