研究概要 |
本研究の目的は,ロボット制御に関わる従来の誤った常識を打ち破り,逆動力学を用いない真に実用的なロボット制御のパラダイムを築くことにある.具体的には,関節毎に独立に設けたロバストなサーボ制御器と逆キネマティクスのみをベースとする提案手法が,DD(ダイレクトドライブ)ロボットのような非常に干渉の強い系においても適用可能であることを,本格的な実験によって証明することにある. 研究期間は3年間とし平成4年度から以下の各項目を並列的に進行させた.初年度は装置の製作と操作の習熟に注力した.平成5年度以降より高度なロボット制御の実現へと進んだ.申請時点での計画に基本的に変わる所はなかったが,平成6年度は最終年度であるので以下のように結論をまとめた. (1)関節のロバストサーボコントローラの開発 外乱抑圧特性やシステム変動に対するロバスト性を改善する諸方法の関係を明確にした.とくに,関節のロバスト制御系の安定性問題(系全体の安定性やDDロボットでの特別な条件など)を明らかにし,制御系設計における有用なノウハウを得,ロバストサーボ適用の指針をまとめた. (2)ロボット制御の統一的実現 ロバスト位置制御系を内含する形のインピーダンス制御・コンプライアントモーション制御・力制御・ハイブリッド制御など,ほとんどすべてのロボット制御の統一的実現法をまとめ,実験によってその有効性を確認した. (3)ロバストな力制御系 柔硬とりまぜた対象物体を安定に把握するために,従来から用いられてきた適応制御やニューラルネットなどの学習機構を用いず,あくまで固定係数のロバストな力制御器によって,さまざまな特性をもつ対象物体を安定につかむ新しい手法を実現した. (4)衝突過程の制御 軌道制御から力制御へ移行する際に生じる衝撃力を緩和する方法を,衝突検出を力センサまたは外乱オブザーバのみで行う場合につき実現した.目(テレビカメラ)の利用は未検討に終わった.かわりに,障害物回避軌道計画に関しする実用的な高速アルゴリズムについておもしろい成果が得られた. (5)柔軟関節の制御 減速機や力センサの剛性が低い場合や,アームが剛体とみなせない場合を取り扱う.制御対象は2慣性共振系で表現できることが多く,状態オブザーバやH∞制御を用いた制御を適用した.直接ロボット関節への適用はできなかったが,軸ねじれ制御に関して計画以上の成果が得られた.すなわち,制御対象を表現する2慣性共振系の制御法として,状態オブザーバを用いるSFLACの提案,H∞制御やμシンセシスを用いた手法,さらに外乱オブザーバを用いる共振比制御などを考案し,シミュレーションや別途購入した3慣性系実験機による実証を行った.
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