研究概要 |
亀裂性岩盤内に大規模空洞を施工するとき,亀裂内に存在する地下水(裂か水)は一時的に排除され,完工後に徐々に亀裂内を上昇し,水位は回復する.この過程で相対的に開口幅の小さな亀裂には空気が取り残され封入されるが,水位上昇につれてさらに封入空気圧が高まると,気泡となって地下水内に流入・混入する.この現象は空気と水の混在する亀裂系内の流れを考える上で重要であり,そのシミュレーション手法を確立することはより一層複雑な現象の理解のために必要である.本年度は,このシミュレーション法を開発するとともに,実験によって手法の妥当性を確認した.つぎにこの手法を用いて,開口幅の異なる多数の亀裂が複雑に交差する亀裂系モデルを設定し,地下水で満たされた亀裂系に高圧空気が侵入する過程について研究した.その結果,高圧空気は相対的に開口幅の大きな亀裂を経路として岩盤内に侵入する一方,幅の小さな亀裂には地下水が封入されほとんど流動しないことが明らかになった.また空気が侵入した亀裂周辺は局所的に圧力が上昇し,岩盤内の圧力分布は亀裂系の特性(亀裂密度,開口幅分布,亀裂長,方向)に大きく影響されることがわかった.この知見は,亀裂性岩盤を多孔質地盤として扱い,そこでの高圧空気侵入を解析することによっては得られないものである. 亀裂内に高圧空気が侵入すると,低レイノルズ数ではあるが流速の大きな流れとなり,亀裂壁面での摩擦や膨張などにより空気温度が変化する.圧縮空気貯蔵の実証実験について解析を行い,漏気箇所の特定への温度測定の適用性,および漏気によるエネルギー損失について評価した. 今後,高圧空気侵入による亀裂系内の圧力分布を考慮して,亀裂性岩盤中の破壊面の推定などを既に開発している岩盤歪に基づく逆解析手法を活用・実施していくことが可能となったと考える.
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