研究概要 |
しらす斜面の風化作用に伴う劣化と侵食に対する抵抗力を評価するための基礎的実験と,崩壊危険度を確率的に予測する方法を考察した。主な成果は次の通りである。 1.乾湿の繰返しに起因して,軽石片からなる小比重粒子は大比重粒子の4-6倍多く細粒化する。 2.乾湿の繰返しに伴うせん断特性の変化は,変形性状,特に変形後期のひずみ増分比に大きく現れ,岩質材料的な破壊様式から土質材料的な破壊様式へと変化する。 3.セメントで固結したしらすの弾性波速度と,一軸圧縮強度,圧裂引張強度,および見掛けの粘着力の間には良い相関が認められる。従って,地山しらすの固結度の推定に弾性波速度を利用できる。 4.セメントで固結したしらすの風化侵食特性から乱さない地山しらすの特性を推測できる。 5.斜面災害の発生は崩壊の素因,誘因および災害拡大・抑制因子のグループに分けることができる。これらの因子をリスクファクターとみなして,マルチプルリスクの概念を適用して得られる多重ロジステイック分析は因子の災害発生への寄与の度合いだけでなく,その災害発生に対する効果も表すことができる。 6.多重ロジステイック関数では,調査対象期間を設定して分析しているので,パラメータの定数項が時間の関数に無関係の項となっている。リスクファクターは本来,経時変化する性質を持つので,それをそれぞれ時間関数で表し,パラメータの定数項を時間と無関係の項にすることにより,調査期間ごとに分析する必要がなくなるとともに,災害・防災ポテンシャルの変化をより定量的に評価することができる。
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