計画初年度である本年度は、研究目的達成に必要な基礎的な水文気象データおよび降積雪試料の収集・採取に努めた。今冬の石川県内の降雪は12月下旬頃からであり、3月現在山間部では2m近い積雪があり、現在も水文・気象データおよび積雪試料の採取を継続中であり、すでに採取した積雪試料についても化学成分の分析作業は継続中である。これまでに得られた分析結果から以下の点が明らかとなった。 1)内灘、金沢、鳥越、尾口村、白峰村の各点で観測された降雪のpHは4.2〜5.2の範囲であり、平均値は4.5〜4.9であり、降雪の酸性度はかなり高い。 2)降雪の酸性成分は北西季節風により大陸方面から運ばれてくるものが主であるが、都市域における人間活動によるものも含まれ、山間部より都市部のほうがやや酸性度が高い。 平野部と山間部では気温、降雪量に大きな差が見られ、特に山間部では標高が100m上昇するごとに気温は約0.8゚C低下し、降雪量もそれにともなって増加し、積雪は標高200mごとに約1.2倍となる。しかし、降雪の酸性度(pH)に関しては顕著な差はみられない。 4)積雪の変態にともなって積雪の酸性度(pH)は大きく変化する。すなわち、新雪およびしまり雪ではpHに変化はみられないが、積雪が水を含みざらめ化するにしたがい、雪の結晶に付着していた酸性物質が水により洗い流され、積雪のpHは急速に上昇し、きれいな雪となる。 5)石川県は暖地積雪地帯であるため、寒冷地ほど明確なACID SHOCKは見られない。
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