平成5年度の研究実績を列挙すると以下のようになる。 (1)継続中のNOAA直接受信解析システムの能力強化を行なった。大容量光磁気ディスクを使って、1988年夏からの直接受信データおよび1975年以降のNOAAのCCTデータのベースをつくり、高速度パソコンによる画像処理を実現した。 (2)海洋乱流場中の組織的渦構造の強調処理のためのハイパスフィルタ、渦度場および発散場の演算と表示および沿岸潮位時系列データのwavelet解析のプログラムが実用レベルで稼働した。 (3)黒潮のシアーによって太平洋沿岸に発達する乱流境界層が観測された。1988年2〜3月における渦度の発生と乱流境界層の発達、4月中旬における遠州灘冷水塊への逆カスケードと黒潮の蛇行への変化、6月の低気圧通過を引き金とする冷水塊の減衰と黒潮の非蛇行への変化が検出された。 (4)四国海盆中の膠州海山が右転暖水渦をlockすることが見出され、黒潮変動と四国海盆中にlockされた組織的渦構造との関連性への手掛かりが得られた。 (5)格子乱流に関連する回転系水理模型実験によって、閉じた海域における3次元乱流場からの組織的渦構造への逆カスケード過程を調べた。 (6)おなじく回転系水理模型実験によって、閉じた海域における乱流ジェットの組織的渦構造への変化のプロセスを調べた。 (7)歪み率25の50万分の1大阪湾潮流乱流場Rossby/Froude相似水理模型実験を行ない、さきの歪み率50の実験との比較により模型実験のスケール効果を調べた。 (8)得られつつある組織的渦構造の知識にもとづいて過去の衛星・海上データの解析を行ない、本研究の応用手法を確立した。
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