平成5年度は、歩行環境整備において重要な利用主体である車いす利用者に関して、(1)車いす利用者の注視特性、(2)横断歩道における車いすと歩行者の挙動、の2点について研究を行った。 (1)車いす利用者の注視特性:車いす利用者の注視特性としては、車いすは狭幅員で通行量が多くなると左右を見る余裕がないこと、危険対象を注視する割合が高くなること、目の動きも速くなることなど、車いすにとっては負担が大きいことが分かった。注視する割合の高い放置自転車は、歩道の幅員を狭めている原因で、これらを歩道上から排除する必要がある。さらに、自転車通行帯を設けるなど車いす利用者が安心して歩道を利用できるような配慮が望まれる。また、車いすの高さは歩行者に比べて低いため、ドライバー等から認知されづらいという問題もある。 (2)横断歩道における車いすと歩行者の挙動:現在行なわれている道路構造基準の改正では、歩道については車いす利用者等への配慮がなされているが、横断区間においてはその基準が示されていない。そこで本研究では、車いす利用者と歩行者の歩行挙動を明らかにするとともに、両者が安全で快適に横断歩道を利用するための歩行環境について検討することを目的とした。そこで車いすについては速度、歩行者については速度、速度の標準偏差、減速、車いす追従、追越しについての分析を行った。その結果、車いすは歩行者密度1.2人/m^2以上、歩行者は、歩行者密度1.6人/m^2以上になると、青信号時間の長さを決める目安とされている1.1m/secを下回り、横断歩道を渡りきれないことが明らかとなった。
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