研究概要 |
本研究は高齢化社会に対応した快適な交通環境を整備するために,(1)高齢者の歩行環境における問題点の抽出、(2)高齢者の注視点の特徴の抽出の2つの分析から構成されている。(1)について、従来高齢者という1つの分類で評価されていた歩行環境について、年齢や障害の種類、自動車の有無など、モビリティの違いによってどの様な問題点や評価が異なるのかについて分析を行った。とくに高齢者の身体的特徴として、明確な障害があるわけではないが、長距離の歩行や段差の昇降ができないといったさまざまな交通困難がモビリティに大きく影響している。 そこで、夏期ならびに冬期における交通困難着目した歩行環境の問題点の抽出を行った。その結果、困難グループと非困難グループでは、交通環境に対する評価が異なり、困難グループで顕著となった問題点は、夏期では横断施設の少なさ、ベンチなどの休憩施設の少なさであり、また冬期では、歩道の凍結、歩道橋や横断歩道の凍結、横断歩道で時間内に渡りきれないなど、安全管理施設に関して他の高齢者と異なった問題があることが明かとなった。 また、車いす混入時の車いすと利用者と歩行者の挙動について分析した。次いで車いす利用者の負担感を把握するため、その注視特性について分析を行い、両者が安全で快適に利用できる環境について考察を行った。車いすと歩行者の混合交通における歩行挙動分析においては、車いすや歩行者のコンフリクトについて、車いす2台の状況までを考慮して、速度低下や追従、減速の状況を明らかにした。(2)の注視点調査では、車いす利用者の注視点分析から、車いすは狭幅員で通行量が多くなると左右を見る余裕がないこと、危険対象を注視する割合が高くなること、目のと動きも速くなることなど、車いすにとっては負担が大きいことが分かった。注視する割合の高い放置自転車は、歩道の幅員を狭めている原因ともなっており、注視特性の観点から問題点を指摘した。今後、自転車通行帯を設けるなど車いす利用者が安心して歩道を利用できるような配慮が望まれることを指摘した。
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