本研究の最終年度にあたり、既存構造物の動特性、地震動入力の特性及び建物の安全性レベル等確率論的地震荷重評価の重要となる問題点について前年度までの結果を踏まえて総合的に検討した。 既存建物の動特性については、前年度までに行った常時微動測定を新たに4箇所実施し、各モードの固有周期と減衰定数を算定して設計時の値と比較し、前年度の解析結果の妥当性を確認した。 地震動入力については、前年度提案した原点指向履歴特性を有する1質点系の弾塑性応答を最大にする所定のパワースペクトルを有する入力地震動を位相特性だけを用いて作成する手法を多質点系に発展させると共に、剛性低下しないNormal Bi-linear履歴特性を有する1質点系にも適用できる作成手法を提案し、従来の結果と比較検討した。 建物の安全性レベルについては、既存高層建物についてその動的振動モデルの各パラメータを確率統計的に整理し、元の建物の動特性を表す代表的なモデルを作成して動的解析を行い、その結果を用い既存高層建物の安全性レベルを求めた。 最適設計荷重については、総費用最小化原理に基づいて破壊損失指標を目標安全性の代替え指標とする意味について検討し、その有効性を示した。 以上、前年度までの成果を発展させ、また総合的に整理し、確率論的に地震荷重を評価する際に重要となる諸問題を定量的に明らかにした。
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