地震荷重評価を確率論的に行うために関与する諸問題について考察した。まず、地震危険度解析については、プレート境界に発生する地震を分離したモデルや歴史地震のデータを用いた年最大地分布に適合する極値分布を用いる場合の上限値の設定の方法を考えることによって地震危険度マップ等が改善されることを示した。原点指向型履歴特性を有する1質点系の変位応答を最大にする入力波を線形位相を用いて作成できることを示し、モード重量法によって分解された各モードに対して1質点系の方法を適用することで多質点系にも応用でき、ランダム位相波と比較して多大の応答を与えることを示した。また、Normal Bi-Iinear履歴特性の1質点系については、等時間間隔に振幅が卓越するように位相を与えて作成した入力波が、大きな累積塑性変形を与えることを示した。組み合わせ荷重を評価する場合の基本的なケースである2変数の場合について、各々が対数正規変数の時の設計ポイントの近似式の精度やその和の対数正規変数での近似について検討した。既存構造物の動特性については、4棟の中低層建物と5棟の高層建物で常時微動測定を実施し、それを解析して一次固有周期は設計時の仮定値より短く、減衰定数は周波数比例型では過大評価になることが指摘された。また、設計時の動的振動モデルのパラメータを統計解析し、剛重比、降伏せん断力係数や第一剛性比等の応答に影響するパラメータの高さに関する分布形状からS造、RC造それぞれに対して代表するモデルをS造6モデル、RC造5モデル作成し、2次モーメント法による信頼性指標を計算した結果、ほぼモデルによらず2〜3となることが確認された。最適設計荷重については、総費用最小化の原理に基づいて最適信頼性手法による設計荷重決定法を提案し、その例として所定の安全性レベルを確保するのに必要な設計用地動加速度を提案した。最後に、本研究で検討した項目全ての関連性を検討し、報告書として作成した。
|