生物粒子の同定に関して、均質で弾性散乱をする球形の浮遊微粒子を対象に光特性を利用した組成識別について基礎的な研究を行った。具体的には、浮遊微粒子の屈折率を指標とし、Mie散乱の理論に基づく散乱光強度の角度分布を利用した識別手法について、計測システムの開発を含めた検討を行った。平成4、5年に得られた知見をまとめると以下のようになる。 1)散乱光強度の2方向同時計測による粒径と屈折率の識別の可能性について、Mie散乱の理論に基づく検討を行い、散乱光強度の検出角の組み合わせとして前方と側方を用いた場合に識別の可能性が高いことがわかった。 2)浮遊微粒子の散乱光強度を2方向から同時に計測するCAPシステムを開発した。本システムによる前方散乱光強度との同時測定から、強度の弱い側方・後方の散乱光強度波形も明確に得ることが可能となった。 3)CAPシステムの性能として、レーザー光の断面強度分布の影響と2方向の検出時間差を把握した。 4)PSL粒子を用いた散乱光強度の角度依存性に関する理論値と実験値を比較し、CAPシステムおよび本識別手法の妥当性を検証した。 浮遊微粒子の組成識別、さらには生物粒子の識別については、今回行った屈折率に関する検討だけでなく、物性の異なる粒子の散乱光強度波形の解析と新たな指標の抽出、検討が今後の課題となる。
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