交付申請書に予定として記載した3つの実験の内、以下に示す2つを行った。 1.昼景と夜景のスライドによる印象評価実験:この実験の目的は、スライドの順番により目の順応状態が変わるため、この生理的な状態変化と心理評価の対応を調べることにある。この実験による新しい知見として、(1)昼景から夜景に変わるとき、同じ夜景のスライドであるのに評価が高くなる。(2)特に、夜景が低層階であるときに顕著である。(3)このとき視線の動きは、相対的に見ると停留時間が長くなりまた視線が大きくジャンプする。(4)予備的に行った瞳孔径変化でも、この状態では順応が十分ではないことが確かめられた。(5)総合すると、明るい昼景のスライドから暗い夜景のスライドに変わると、順応が十分でなく細かい部分までよく見えていないことになり、このとき心理評価は悪くなるのではなく逆に良くなる。以上の成果が得られ、仮説として持っていたプレザントネスの現れる状態を再現することができたと考えている。 2.モデリング評価実験:照明状態により、顔の見え方すなわちモデリング評価が変化する。従来、順応状態が移行していく場合については考慮されていなかった。また視線の動きも全く考慮されていなかった。今回の実験では、まだ解析中であるが、(1)照明状態によって視線の動きが大きく異なる。(2)順応状態にも影響される。などの知見が得られた。この結果、従来グレアが起こったりどぎつさを感じたりして、不快状態として処理されていた状態でも、快適な評価が得られる場合があることが確かめられた。 上記2つの実験から、仮説として持っていたプレザントネス理論についてかなり確証が得られたと思っている。2年度目は実空間での実験を加え、さらに実験を進める予定である。
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