本研究では、研究代表者が概念開発を行った温冷感におけるプレザントネスから出発して、視環境においても起こりうるプレザントネスについての一つの類似性を指摘しその構造を明らかにすることを、研究目的として掲げた。全てのプレザントネスが、温冷感のプレザントネスと同じように説明できる訳ではないが、目の順応状態が変化するときにプレザントネスが生じる場合があるということである。 実験は二種類行われ、一つは昼景と夜景が交互に現れる実験条件とそれぞれが連続して出現する実験条件との比較実験である。この実験結果から、同じスライドを用いても、昼景と夜景が交互に現れる条件の方がよい評価が現れるという結果が得られた。また当然ながら、この場合、瞳孔径変化についても大きな変化が見られ、順応状態が変化していると予想される結果となった。つまり、前に述べたプレザントネスの仮説を裏付ける結果が得られた。 二番目の実験は、照明におけるモデリング評価の実験である。ここでは、従来から定説として用いられているベクトル・スカラー比ばかりではなく、スカラー照度も考慮すべきであることを明らかにした。このように、モデリング評価が明るさ感と関係するならば、当然それまでの順応状態が影響することは当然であり、本研究においても順応状態がモデリング評価に及ぼす影響が検出された。瞳孔径変化だけ捉えた実験では本実験の範囲内では元に戻るのに約1分を要することが分かった。視作業を行っていて、視線を変えた場合にプレザントネスが起きうることが考えられ、今後の研究の必要性を指摘した。 以上、本研究において、視環境におけるプレザントネスを示す例を呈示することができ、また目の順応状態が印象評価に関与することを明らかにした。
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