1.都心商業地域における町衆企業のコミュニティ・アイデンティティ ここでは、京都市中心部における二つの元学区において、すべての事業所に対してアンケート調査を実施した。調査内容は、事業が地元コミュニティ活動に対してどのような関心を示し、また、どのように貢献しているかということである。その結果、山鉾町にある企業の場合、祇園祭りを軸としたコミュニティ活動が活発であり、それを支える地元企業の役割が大きいことが明らかになった。とはいえ、新規参入企業もしくはテナントの場合には、このようなコミュニティ活動に積極的に参加する機会が少なく、伝統的に京都の町衆と呼ばれるような階層(これを今回は、町衆企業と呼ぶ)によることがほとんどである。ただし、このような町衆企業でさえも、戦後に育ったところが多い。このことは、新町衆を今後積極的に育成するシステムを考える上で重要な示唆を与えてくれる。さらに、町衆企業になるための条件には、自らが自覚する条件と、地元コミュニティから認定される条件とが存在することも明らかになった。 2.長浜楽市にみる企業理念の展開 ここでは、セゾングループが開発した長浜楽市という商業施設の開発過程の分析を通じて、大企業と地元商店街との協調化のシステムとその効果について分析した。ここでは、大資本と地元商業者との協同組合を組織して事業を展開すること、さらには、オープン後においてもセゾングループの経営ノウハウを地元商業者も享受できるシステムが存在している。
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