研究概要 |
八幡平周辺に分布する玉川溶結凝灰岩類の岩石断面における割れ目の分布と形状について,10m×10m,50cm×50cmおよび1.6mm×1.6mmの観察領域から得られる割れ目パターン図を用いてフラクタル解析を行なった。割れ目パターン図の作製およびフラクタル解析には,本科研員で購入した画像解析装置を用い,以下の結果を得ることができた。 玉川溶結凝灰岩類の断面における割れ目の分布は,統計的自己相似性を示し,そのフラクタル次元をボックスカウンティング法を用いて明らかにしたところ1.08〜1.48の範囲内にあることがわかった。またさまざまなスケールのフラクタル次元の平均値は,ほぼ同様の値であり,各スケールのフラクタル次元の平均値を10m四方の観察領域の条件に統一する方法を提案し,その結果10m四方から1.6mm四方の範囲内において,割れ目の分布はフラクタルであり,そのフラクタル次元の平均値は1.48であった。 任意断面中の割れ目の形状にもフラクタル性が認められ,フラクタル次元は1.01〜1.05の範囲にある。これらの割れ目パターン図における割れ目の分布や形状についてのフラクタル性から,異なるスケールでの割れ目パターン図から,他のスケールのフラクタル次元を推定することが可能であり,このことは限られた大きさの岩石試料から地熱貯留層の割れ目の分布や形状を推定できることを示している。 本研究で用いたボックスカウンティング法において,全体の大きさRと最小セルの大きさrmimと割れ目計測の計測感度lminとの比を一定に保つ必要がある。すなわちrmin/Rとlmin/Rが0.002のとき,顕微鏡スケールから10mスケールでの異なる観察領域の割れ目分布のフラクタル次元を比較することができる。
|