地殻物性の異方性と弾性波動現象に関する地球工学的研究

1993 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 04452265
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 六川 修一 東京大学, 工学部, 助教授 (50183710)
• 研究分担者: 藤永 好宣 東京大学, 工学部, 助手 (40010988) ; 加藤 俶史 東京大学, 工学部, 助手 (50010989)
• キーワード: インバージョン / 坑井間反射法 / S波トモグラフィ / AVO / 透過波 / 異方性 / 反射振幅

研究概要

本年度は、引き続き行った地震トモグラフィ解析技術の高度化、坑井間反射法、および坑井間におけるAVOと弾性波現象に関する研究を行った.
1.坑井間探査における異方性及び弾性波動現象
S波による波線トモグラフィの高度処理およびその実用性に関する解析を行った。まず、室内模型実験によってS波トモグラフィの有効性を調べ、次いで断裂が卓越した地域における実データを用いてその適用性を検討した.その結果、速度フィルター等によるチューブ波の抑制処理により、雑音に埋もれていたS波の検知が可能になり、S波トモグラフィのインバージョンも充分可能であることが示された.
一方坑井を利用した新しい地震探査法である坑井間反射法に関する基礎研究も行い、地殻物性の解明及び弾性波動現象について攻究した.坑井間反射法には、CDP重合法の適用が容易でないという問題がある.そこで本研究では、共通反射点記録に相当するCDPギャザーを坑井間のすべてのデータより動的に導き出すという新たな方法を考案した.本手法の有効性を数値シミュレーションにより検証した後、二次元の室内模型による実際の波形を用いて実用的検証を行った.その結果、坑井間反射法においても、坑井間の中央付近を中心に高精度のイメージングが可能であることがわかった.
2.AVO現象とその解析
地殻物性の高精度測定では、坑井間探査のジオメトリにおける物理データと地殻の物性値との関係を解明するための基礎データを取得した.まず、入射反射波と地殻の不均質性の影響にともなうP波,S波のレスポンスを高精度計測装置により測定した.媒体の減衰係数およびセンサーの指向性に関する測定を行い、これらを補正項とし、最終的に高入射角における反射係数と入射角の関係を導出した.その結果、従来提示されていた実用式は坑井間反射法のような高入射角には適用できず、より厳密な式に従わなければならないことが明らかになった.

研究成果

• [文献書誌] 六川 修一: "丹那盆地における地震トモグラフィデータの特徴とその処理" 物理探査学会第86回学術講演会論文集. 102-105 (1992)
• [文献書誌] 加藤 俶史: "初動走時並びに振幅を用いたトモグラフィの比較とその評価" 物理探査学会第87回学術講演会論文集. 82-85 (1992)
• [文献書誌] 石井 吉徳: "室内模型実験によるAVOの研究" 物理探査学会第88回学術講演会論文集. 189-193 (1993)
• [文献書誌] 六川 修一: "回折トモグラフィの散乱場抽出法に関する検討" 物理探査学会第88回学術講演会論文集. 252-255 (1993)
• [文献書誌] 六川 修一: "坑井間反射法の基礎研究-室内模型実験-" 物理探査学会第89回学術講演会論文集. 174-177 (1993)
• [文献書誌] 六川 修一: "坑井間反射法の基礎研究-データ処理-" 物理探査学会第89回学術講演会論文集. 178-182 (1993)
• [文献書誌] 加藤 俶史: "初動走時並びに振幅を用いたトモグラフィの比較とその評価" 物理探査学会第87回学術講演会論文集. 82-85 (1992)
• [文献書誌] 加藤 俶史: "数十MHz帯域電磁波トモグラフィデータの特性解析とそのインバージョン" 物理探査. 46. 49-57 (1993)
• [文献書誌] Yoshinobu FUJINAGA: "A Study of Pressure Responses Water Injection in the Tanna Basin" 物理探査. 46(予定). (1933)
• [文献書誌] 石井 吉徳: "室内模型実験によるAVOの研究" 物理探査学会第88回学術講演会論文集. 189-193 (1993)