高炭素鉄合金(Fe-C-Cr-Mo)アトマイズ粉を、金属基材上にプラズマ溶射することによって形成される皮膜中の非晶質層の形成能を検討した。10〜45μmのアトマイズ粉を用いて、溶射距離を50〜200mmの間で変化させて、冷却効果の大きい銅基材上に溶射した。溶射距離が短くなるにつれて非晶質相の生成割合が増加し、溶射距離50mmのものでは、ほとんど非晶質相である皮膜を得たが、ε相(結晶質相)も混在した。さらに、鋼製水冷ジャケット表面へ溶射すると、皮膜中の非晶質相の生成割合は、ε相も混在しているがさらに非晶質相の生成割合が増加した。 この溶射皮膜の耐摩耗試験では、クロムめっき材(比較材)よりは劣るが、非常に良好な耐摩耗性を示した。 次に、非晶質相の形成能を高めるために、クロム、モリブデンの含有量を増加させた高炭素鉄合金アトマイズ粉(10〜45μm)を溶射材として用いた。溶射距離を50mmとして銅基材上にプラズマ溶射すると、完全な非晶質相の溶射皮膜を得ることができた。 この溶射まま(非晶質相)の皮膜の硬さは、Hv1000〜1200と非常に硬く、焼戻しによって非晶質相を結晶化させると、約Hv1500というセラミック程度の硬さになる。さらに、800℃に焼戻しても約Hv1400以上の高硬度を示す。また、この非晶質相皮膜の熱分解挙動を調べると、結晶化温度が600℃以上であり、高温耐摩耗皮膜としての可能性を示した。
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