本研究は粒子分散強化型アルミニウム基複合材料について、その構成要素であるマトリックス・強化粒子・その界面の、応力負荷状態での挙動を系統的に解析し、製造プロセスとの関連を明らかにすることを目的とした。そのために前年度の成果を基に、溶湯攪拌法や粉末押出し法で作製したアルミナ粒子及びSiC粒子強化アルミニウム基複合材料を用いて、走査型電子顕微鏡内での引張り試験によるミクロ組織変化の連続観察や、破断後の破面の観察を行った結果、次のような知見が得られた。 (1) いずれの材料でも、巨視的な破断が始まる最高荷重点よりもかなり小さい引張り応力の負荷によって、材料内部に粒子/マトリックス界面の剥離や粒子の割れによる微視亀裂の発生が見られた。 (2) 粒子の分散が良くないためにそのクラスターが存在する場合には、さらに小さい応力の負荷によって、クラスター内部のマトリックスの延性限界による比較的大きい亀裂が発生する。 (3) 負荷応力が増すと微視亀裂は開口して大きくなるが、マトリックスの延性のため破断直前まで進展することはなく、最大荷重点ではほとんどの粒子に亀裂が見られる。 (4) 粉末押出し法で作製した複合材料では界面の剥離と粒子の割れの両者が見られるが、破面の観察から、界面の結合強度は比較的強いものの、製造プロセスにおける未結合部分の存在によって剥離が生じと考えられる。 (5) 溶湯攪拌法による材料では界面の剥離だけが見られ、その粒子の破面はかなり脆い様子であり、粒子とマトリックスの合金成分との反応による脆い化合物の生成が予想される。
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