平成6年度は、大気中で拡散接合した軟鋼/チタン接合材の疲労試験を行い、疲労強度を測定するとともに、超音波測定を行い、得られた超音波波形と接合状態との関係を調べた。得られた成果は概略以下の通りである。 (1)前年度実施したせん断試験においてき裂は接合界面に沿って伝播し、せん断破壊したが、今年度実施したせん断疲労試験においては、高荷重振幅ではせん断破壊し、低荷重振幅では接合部端部で発生したき裂がチタン側の板厚方向に伝播する垂直破壊を生じた。このため、軟鋼/チタン接合材の疲労寿命は軟鋼同士の接合材及び軟鋼/ニッケル接合材に比べて低い値を示したが、疲労寿命1×10^7回で定義した疲労限度はこれらに近い値となった。荷重振幅を一定として疲労試験を行い、疲労寿命分布を調べた結果、疲労寿命分布は2母数ワイブル分布で整理された。 (2)接合界面に形成された反応相の状況、及び接合強さとの関係を調べるために、接合界面からの反射波形を測定し、FFT解析した。低温で接合して接合界面に薄い反応相が出現した場合、超音波スペクトルは探触子の中心周波数近傍を頂点とする山形に分布した。これに対し、高温で接合して界面が一部溶融した場合、溶融層界面の凹凸のためにスペクトルは幾つかの周波数位置で大きく減衰していた。次いで、探触子の特性などを除くためにスペクトルの伝達関数を求め、統計解析法の一つである部分空間法を適用して第1及び第2主成分を求めた。これらの主成分よりなる部分空間上に展開されたスペクトルデータは接合状態に大きく依存することが分かった。また、推定直径の他にこれらの主成分を用いることにより、せん断強さの定量的な評価能が一層向上することを示した。
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