研究概要 |
本研究は,熟成堆肥の連用が畑地土孃にどのような影響をおよぼすかを色々な角度から,長期的に測定・究明することを目的としたもので,昭和58年に開始し,現在も継続中である。 堆肥の連用試験は,(1)〜(3)堆肥1,3,10t/10a混入区,(4)〜(5)堆肥1,3cm被覆区,(6)化学肥料区および(7)無肥料区の7試験区である。 なお,科学研究費補助金の交付最終年度の平成6年度には施肥を中止した(最終肥料施用は平成5年6月)。過去12年間の堆肥区の結果を化学肥料区のものと比較しながら示せば以下の通りである。 1.土壌の物理性:堆肥施用量にほぼ比例して,年々団粒形成が進み,耕土の保水性・透水性の向上,膨軟化,地温上昇がみられ,特に,被覆区においてそれぞれが顕著であった。施肥中止後,有機物含量は徐々に減少しているが,中止後1年半目(平成6年12月)でも相変わらず団粒は増加し,保水性・透水性・土壌硬度・地温等に大きな変化は見られない。 2.土壌の化学性:年々窒素および可給態りん酸の蓄積・増加が見られる。土壌の緩衝能が大きく,土壌pHの低下も抑制されている。化学肥料区では平成5年から地表部への塩類集積が見られようになった。堆肥施用中止1年半後,窒素・りん酸・カリそれぞれの全量の変化はごく僅かであるが,可給態りん酸の減少が突出している。 3.土壌の生物性:土中のダニの種類と個体数が化学肥料区にくらべて極めて多い。堆肥施用中止により微生物活性が次第に低下している。 4.作物栽培:連用3年目から,堆肥1/10a区以外の堆肥区では常に化学肥料区より安定した生育と高い収穫が得られて居り,T/R比が大きい。化学肥料区では平成5・6年度には塩類集積と連作障害によると思われる発芽不良と生育障害がみられた。
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