研究概要 |
研究対象の流域として、三重県員弁郡の中里貯水池(水資源開発公団所有)とその流域を仮候補として選定し、貯水池の水温、蒸発散量等を測定した。またそれと併行して、流域の植被の違いによる蒸発散量の違いを見積る基礎として、三重大学附属農場に於て、裸地,ソルボ畑,茶畑の3地点で蒸発散量の観測を行なった。さらに、北海道十勝支庁の駒止湖に於て、湖水の蒸発量を熱収支ボーエン比法とソーンスウェイト・ボルツマン法で長期間(約5ヵ月)観測し、蒸発量の測定方法について検討した。 以上の観測の結果、次のような知見を得た。 まず中里貯水池と農場の観測では、測定日の中から晴天の日を抽出しその日の純放射量の時間最大値に対する各熱収支項の比をとり、それらの24時間変動を比較した結果、晴天日の一般的傾向として次のような結果が得られた。(1)地中または水中への熱移動量は、貯水池でその変動が最も大きく、畑地では、ソルボ畑,裸地,茶畑の順で変動が小さくなる。(2)貯水池では、午前中は純放射量が貯水への貯熱(水温上昇)に使われるため、蒸発量のピークが午後に現われる。(3)裸地では蒸発量のピークが最も早く現われ、そのピーク時は純放射量のピーク時に一致している。(4)蒸発量または蒸発散量は、貯水池が最も大きく、畑地では茶畑,ソルボ畑,裸地の順で相対的な順位付けができる。 一方、駒止湖の観測結果からは、ボーエン比法では時間単位の短期変動では誤差が大きいが、日平均値をとると精度が高まり、ソーンスウェイト・ボルツマン法の結果とよく一致することが明らかになった。なお、駒止湖の6月半ばから11月初旬までの平均蒸発量は、約3.5mm/dayであった。
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