昨年に引き続いて、三重県員弁郡の中里貯水池および北海道の駒止湖で湖面蒸発量、水収支の観測を行った。中里貯水池については、寒候期の蒸発量を計算し、その結果をまとめて三重大学生物資源学部紀要に発表した。また駒止湖については、湖面蒸発量と水収支を計算し、検討した。さらに、北海道の洞爺湖に新たに測器を設置して、流域からの流出量と湖面蒸発量の観測を開始すると共に、それと平行して、流域の蒸発散量を見積もる基礎として、三重大学附属農場において植生空間の貯熱量変化が地表面熱収支に及ぼす影響についての観測を行った。 以上の観測の結果、次のような知見を得た。 まず中里貯水池では、寒候期175日間の蒸発量は-1.73mm/dayから5.48mm/dayの範囲の値であった。また、1日の蒸発量の最大値は純放射量の最大値出現から2時間から3時間遅れて現れ、その熱は湖水の熱量が使われていた。このことから蒸発量の1日の時間変化は水体の貯熱量の変化に強く影響されていることがわかった。 駒止湖の観測では、暖候期5か月間の蒸発量は2mm/dayから6mm/dayであった。蒸発量と水位変動および降水量から水収支を計算した結果、蒸発量の変動は、流入出量および水位の変動と比較すると安定しており、その値も相対的に極めて小さかった。また水位の変動は降水量とはほとんど相関がなく、したがって駒止湖の水位は流域からの流入量と湖からの地下水流出量のバランスによって決定されていることがわかった。 また8月から開始した洞爺湖の観測では、100日間のデータを整理して湖面熱収支について検討した結果、湖面からの顕熱伝達量と潜熱伝達量は純放射量よりむしろ水体の貯熱変化量に強く影響されていることがわかった。なおこの観測は現在継続中であり、水収支についてはまだ結果が出ていない。 最後に9月から11月にかけて行った農場の観測では、植生空間の貯熱変化量が蒸発散量の1日の変動パターンに少なからず影響していることが明らかになった。
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