北海道の洞爺湖で暖候期約6ケ月間の蒸発量を観測し、純放射量と水温のデータから年間蒸発量を推定した。蒸発量の計算は水体の貯熱変化量を考慮した修正ペンマン法で行った。また流域の蒸発散量を見積もる基礎として、湛水された水田で熱収支ボ-エン比法による蒸発散量の測定を行った。 その結果、以下のような知見が得られた。 (1)蒸発量は、6月、7月に少なく、8月から9月にかけては2mm/dayから4mm/dayの間で増減を繰り返し、その後冬に向かって徐々に増加する傾向にあることがわかった。(2)水面の熱収支を計算し、潜熱伝達量QEと他の熱収支項の関係を調べた結果、QEは顕熱伝達量QHよりむしろ純放射量QNと水体の貯熱変化量QGの和QT(=QN+QG)と高い相関があることがわかった。その相関係数は0.948で、回帰式はQE=0.643・QT+48.9(単位:KJ/m_2・day)であった。(3)この回帰式を基に、過去1年間の純放射量のデータと過去に月1回の割合で1年間測定された水温垂直分布のデータから年間の蒸発量を推定した結果、年間蒸発量は約820mm/yearで、季節的見ると4月から7月にかけて小さく、10月から2月にかけて大きいことが分かった。(4)湛水された水田における40日間の蒸発散量は211mmで、その日平均値は5.3mm/dayであった。この値は昨年および一昨年に測定した裸地、茶畑、笹地の値より大きく、また水体の平均蒸発量より大きかった。 以上の今年度の結果と今までに行った三重県中里貯水池、北海道駒止湖等の結果を総合し、流域の蒸発散量の変化が陸地水体の水収支に及ぼす影響について考察した結果、もし流域の蒸発散量が何らかの原因で変化すると、陸地水体の水収支バランスが変化し、その結果水体の平均水位が変化することが推察された。
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