研究概要 |
流域の都市化が進むにつれて不浸透域が急増し,これに伴って降雨の流出性状が急激化し,強雨時に出水はんらんを起こす地域が多くなってきている。本研究では、このような不浸透域と浸透域が混在する都市化地域の雨水流出特性を,調査流域における実測結果をもとに詳細に調べ,このような流域に対する流出システムのモデル化と流出シミュレーションについて検討を加えた。結果の概要は次の通りである。 1)、神戸市域に不浸透域と浸透域が混在する調査流域を設定して、水文観測,流域システムの実態調査,出水時の流量観測を行って,降雨流出特性を把握するための基本データを得た。2)、調査流域一帯にこれまで発生した強雨時の流出,はんらん水に関する資料,特に1989年9月14日の秋雨前線豪雨による出水資料を収集,解析してこの地域の降雨流出特性,排水路システムにおける溢水はんらんのプロセスを明らかにした。3)、降雨損失特性は不浸透流出面であるか,浸透流出面であるかにより大きく変わる。不浸透面における降雨損失は凹地貯留により,浸透面でのそれは凹地貯留と地中への浸透によるものとして降雨損失モデルを組み立て,モデルパラメーターの値を抽出した。4)、不浸透域と浸透域が混在する流域の雨水流出プロセスを組み入れた流出シミュレーションモデルを構築し,その適用性について詳細な検討を行った。さらに,こうした流出シミュレーションの簡易化について,等価流域モデルを用いる方法を提示した。5)、流域における不浸透面の増加が,豪雨によるはんらんを伴う流出特性にどのように影響するかを,流出シミュレーションモデルを用いて調べた。これらの結果は水害危険度の評価に有用である。6)、LAND SATのTMデータを用いて,都市化地域の広範な地被特性をとらえる簡易法を提案した。これによると,土地利用判別の解析に要する時間がかなり短縮される。
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