研究概要 |
本研究はマイクロ波の透過波から得られる温度・水分などの生体情報に注目した研究を行った。本年度の研究実績の概要は以下の通りである。 1.マイクロ波ネットワークアナライザとパソコンを用いた簡便なマイクロ波CTシステムを試作した。当システムではマルチパスを除去するため,正弦波を入力して周波数領域で測定した透過信号を時間領域に変換し,送受信アンテナ間直線経路の到着時間に対応する時間ゲートを設けて,直線経路を伝搬してきた波のみを抽出する。この時間ゲート内のデータを再び周波数領域に戻し,直線経路の伝搬周波数特性を得る。任意の周波数の特性を投影データとして選択できるとともに,多周波の特性を組み合わせて投影データとすることができるフレキシビリティに富んだCTシステムとした。 2.X線CTと同様直線経路を仮定して画像の再構成を行った。単一の周波数で大体の温度像は得られたが,容器壁など構造要因に基づく減衰定数分布の変化があり,細胞間空隙のある植物組織では同様の傾向が著しいことが分かった。 3.水の減衰定数等の温度係数がマイクロ波の周波数によって大きく異なることに注目し,この特性を用い,特に植物において著しい組織誘電特性の不均一性に基づく影響を除去して,温度情報を分離抽出する方法を提案し実験を行った。その結果,温度係数の異なる2つの周波数から得られた投影信号や減衰定数分布の差を求めることにより,容器壁や組織などの構造的要因がある程度除去され,温度画像が改善された。また,位相定数分布によって温度画像が改善された。 4.マイクロ波TDR(Time-domain reflectometry:時間領域解析)により,穀物層の水分分布の測定を行い,サイロ大きな乾燥機など厚い穀物層の水分分布が計測できることが明かとなった。
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