研究概要 |
1.高度好塩菌におけるP-糖蛋白類似輸送蛋白について 当研究室において,抗癌剤であるdoxorubicin耐性を示す高度好塩菌haloferax volcaniiを得た。この耐性株は多剤耐性を示し,Ca^+拮抗薬により耐性が回復したことからP-糖蛋白と類似した蛋白の存在が示唆された。また,ヒトP-糖蛋白抗体MRK-16を用いたwestern blotによって,この蛋白の分子量は90KDaであることがわかった。ところで,このP-糖蛋白類似蛋白は野生株を高濃度の糖(glucose,fructose(50mM))存在下で培養すると大量発現した。一方、代謝されない糖では大量発現しなかった。そこで,他のアミノ酸、有機酸、アルコール類等の添加の影響を検討した。細胞内においてacetyl-CoAに代謝される栄養物質がP-糖蛋白類似蛋白の大量発現に何らかの役割を有することが推察される。 2.高度好塩菌における糖輸送担体について 高度好塩菌Haloferax vocaniiを30-50mM glucoseを含む培地で培養したとき,glucose輸送担体が誘導される。また,30-50mM fructoseを培地で培養したときにはfructose,glucose輸送担体がそれぞれ誘導される。大腸菌において,glucoseとlactoseの両方を含む培地で培養した際,glucoseが先に利用されることが知られている。そこで,Haloferax volcaniiにおいてglucose,fructoseを含む培地で培養し,どちらの糖が先に利用されるのかを検討した。結果,glucoseが先に消費されfructoseは後から消費されるのが確認された。fructose輸送担体はfructoseの消費が遅い時点でも誘導されていた。従って、糖代謝系の酵素に何らかの影響があると思われる。
|